ご一緒できますように。

「またご一緒できますように!」
演奏家ならよく使うご挨拶だと思う。

それが叶わないこともある。


いつでも、少し怖い。
私は「オケ合わせ初回」というのが苦手である。
しっかり練習もして、時には事前に指揮者とのピアノプローべ(ピアノ伴奏での稽古)をしていただいてから臨むこともあるのに、やっぱりおどおどしてしまう。
ピアノ伴奏でリートを歌う時にはそうならないのだが、
自分ひとりに対して複数の方々と合わせる、というのが変な意識を生むのか、指揮者のいる、合唱の一員として歌うことが多かったからか、芯は全然強くない私の性格なのか、単に練習が足りないのか、とにかく「私について来て」というイニシアチブが取れない。
どうしたいのかな、どういう方向に向かおうとしているのかな、どうすれば中に入れていただけるのかな、とつい「後追い」な歌を歌ってしまう。そういう態度が共演の皆さんを一番困らせるとわかっていながら、探ってしまう。縮こまって、緊張して。
オケ合わせに2回め、3回めがある場合はまだいいが、
第一印象で決まってしまうことも多い。大事な時間。
ソリストとしてどうかとも思うし、
いざ、勝負!くらいの気持ちでいかなくてはいけないのだと思うのだけど。

そのオケ合わせも、とても緊張していた。 もっとも「オケ」という大きな規模ではなく、「アンサンブル」というのが正しかったけれど。
私はバッハを歌わせていただく機会がわりと多いが、古楽を専門的に勉強したことはない。今までの演奏の機会を通して、様々な方に教えていただきながらここまで来た。なので、古楽をご専門にされている方々との共演はこれまた緊張する。
共演の器楽の方々は、とてもお優しい方ばかりだった。私はある受難曲の中のコラールをひとりで歌わせていただいたのだが、チェンバロとチェロと私と、3人でのアンサンブルだった。共演のお二人は、単調に聞こえる流れの中にも豊かな色合いがあることをその音で伝えて下さった。さらに私の歌を聴いてくださっているのが伝わって、心を込めて歌えた。
気持ちよかった。

一日がかりの本番が終わって、別れ際に
是非またご一緒できますように!
ありがとうございました!
とご挨拶をした。

嬉しかった。
素晴らしい方々とお仕事ができたこと、
自分にも可能性があるかも…と思えたこと、素敵な音を聴かせていただいたこと。
嬉しい気持ちの中で漠然と
「こういうの、また歌えたらいいなー」
と思っていた。

昨日、
その時共演した方の訃報に接した。
信じられない…またご一緒したかったのに…という思いの後で
私は今まで「またご一緒できますように」という時は、
もっと頑張って勉強して、私にもチャンスが巡って来ますように、仕事をいただけますように、と、自分の発展の先にのみ「またご一緒」を想定していなかったか。

しかし。
私がいつまでお仕事をいただけるかわからないという不安は確かにあるが、
そうではなくて、
共演した方にもう会えなくなることだってあるんだ。

その方とは最初で最後の共演になってしまった。
寂しい。

思えば、そのお仕事の本番をした次の日に、あの大地震がきたのだった。
何が起こるかわからない。

ひとつひとつの機会を、もっと大事にしようと思った。
自分がいい演奏をできるか、自分の力を出しきれるか、だけじゃなくて
演奏する機会そのものを。

なんて不安定で、そしてなんて充実するお仕事なんだろう、演奏って。

そのことに気づかせてくださって、ありがとうございました。

いろんな方といろんな演奏したい!!と改めて思った。
みなさまー!何でも歌いますよ〜!
お仕事でもそうじゃなくても、ソロでも合唱でも。
メゾ・アルトをお探しの際にはぜひご一報を。

ぜひぜひ、ご一緒できますように!
[PR]

by takahashi_chiharu | 2013-01-08 14:37 | 日々のこと | Comments(0)