お役目を果たす

今日は、東京音大大学院伴奏科の修士演奏会でした。
ホールリハーサルから一週間、
ピアニストちゃんは、いよいよ演奏魂に火がついたといいますか
合わせをしていても、わりとノリノリな演奏で。
いや、多分、ホールでリハーサルをしてみて、
「やっても大丈夫」なこと、
音量、とか鍵盤のタッチの強さ、などの上限がわかって
自由に弾けるようになって、
もともと持っていた「演奏魂」が表にでてきた、ということなのでしょう。
そうなると、コルンゴルトの歌曲というのは
ピアノパートだけで弾いても、十分メロディックで美しく
愛らしく、生き生きと若々しい曲たちなので
練習も、ますます楽しくできたのではないでしょうか。

でも
やはり、「歌曲」の表現は、どの一瞬を切り取っても(たとえピアノパートであっても)
「言葉」から生まれてくるものでありたい。
そして同時に、
「言葉」に命を吹き込むのは、コルンゴルトが書いた音楽であり
音楽の力を借りて、いかに生き生きと「語る」か。

「音楽」が先か、「言葉」が先か―
リヒャルト・シュトラウスの「カプリッチョ」というオペラのテーマではありませんが
音楽の躍動と、言葉のメッセージ力が
絶妙なバランスで拮抗しているのが
魅力的な「歌」なのではないでしょうか。

昨日、最後の合わせをしたときに
「もう一回だけ、詩を読んでみてね」
とピアニストちゃんにお願いをして、
私も詩を読んでみました。
コルンゴルトの選んだ詩は、
彼自身がつけた音楽の性格とは裏腹に
世に出られなかった詩人をまつゆきそうになぞらえたり、
若き日の思い出を振り返る大人(もしかしたら老人)の歌だったり
第一次大戦で戦死した兵士をしのぶものであったり
言葉のうしろに広がる世界に、すきとおった悲しみがあるような
そんな詩ばかりだったのです。
だから、表向きの、音楽の若々しさ、甘さ、かわいらしさだけじゃない
奥行きも感じられる歌にできたら、いいなぁ・・・
そんなことを考えながら、本番を迎えました。

本番では、
今まで一番、表現の幅が広がり、多彩にできたと思います。
・・・あ、ピアニストちゃんがね。
間を作る、音の色を変える、重みを持たせる、軽快に粒立たせる・・・
本当に、いろんなことができて。
しかも、自由でいながら、詩をうたう私のことを置いていくこともなく。
私も、
今日は、ピアニストちゃんの本番であり、私は「共演者」。
彼女が弾きたいように、やりたいように音楽できるように、歌おう。
だけど、ピアノについていくだけじゃなく、言葉を語ろう。
と思い、
時に流れに乗せてもらい、時に私が間を作りつつ
歌えたと思います。
もちろん、発声面とか、言葉の処理とか、反省点もなきにしもあらずでしたが
(レッスン行きたいなぁ。。。)
今やれることは、わりとできたと思います。


演奏が終わって、
ご指導いただいていた先生に講評を伺うと
ピアニストちゃんの、2年間での成長ぶりに、感無量のご様子でした。

今日の演奏会目指して合わせを始めたころ、
「歌の伴奏は、器楽とのアンサンブルより難しい」
とピアニストちゃんは感じていたようです。
言葉の子音を聴いて、ブレスを聴いて
鍵盤をタッチするタイミングを歌い手にあわせないといけない、
歌の音域が低いところでは音量を絞らなくてはいけない、
楽譜には指示されていないけど音の伸び縮みがある・・・などなど。

でも、
合わせを重ねていくうちに、
歌の伴奏も楽しめるようになってきたようでした。

そして、今日の演奏。
「歌の伴奏」とは「歌い手の後にくっついていく」ことだと
思っていたかもしれなかった彼女が
自分のコルンゴルトを作ってくれたと思います。
私のことも忘れないで、ね。

ご指導いただいた先生のご様子から察するに
なんとか、お役目を果たすことができたのかな。


思えば、
私も今まで、素晴らしい先生方や、伴奏してくださったピアニストさんたちから
なんと多くのことを学ばせていただいたことでしょう。
言葉を歌うということ、
音を聞くということ、
詩に対して想像力を膨らませ、
それを、体を使って、テクニックを使って表に出す。
まだまだまだまだ全然できてないですが・・・
私は今まで、レッスンや合わせで
なんどもなんども「ああ幸せだなぁ~」と思ってきたし
「ああこの曲いい歌だなぁ~」と思ってきて、
なんとかしてそれを自分で、舞台上でできるようになりたい!と思って
ここまで来ているような気がして、
だから、この先私と共演していただく方とも
ぜひそういう思いを共有したくて。

私が教わってきた、幸せの記憶を
ほんのちょっとでも、伝えられたら。

先生たちが私に見せてくださる、
魔法のような、ひと言や一声、ひとつの音には
とうてい、及びませんが。

ああ、もっとこういうことできたらいいのになぁ。
私自身も、自分の歌い方、音楽への向き合い方を
振り返り、さらに先へと向かえる
素晴らしい勉強のチャンスでもあるのです。

いまのところ、私が学んできたことの「還元」を
一番できるお仕事(と呼んでいいのかよくわからないけど)だと
思っています。
もしかしたら声楽家を育てるより向いてるんじゃないかとひそかに自負。


あー楽しかった。
昨年10月からの合わせから、今日までが。
ピアニストちゃん、お世話になりました先生、
素晴らしい機会をいただきまして、本当にありがとうございました。
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by takahashi_chiharu | 2012-01-17 23:30 | 演奏会記 | Comments(0)