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コンサートその1 Grand Rapids -アメリカ行き その3-

3月17日、木曜日の夜。
日本では日付変わって3月18日、金曜日の朝

グランドラピッズでの演奏会が行われました。
このツアー最初の演奏会です。

お客様はほぼ満席。

今回のツアーでは、すべての演奏会で
演奏の前に、会場のお客様と演奏者みんなで
日本が今直面している災害について、
お祈りを捧げてから演奏する
ということになりました。

主よ、あわれみたまえ。

と歌いだすそのときから
すべてのひと、ものに向けて
本当にあわれみが向けられてほしい・・・
温かい気持ちが届いてほしい、
いろんなことを、いい方向へ、
追い風をつくって送り出してほしい。

そんな風に思いました。

バッハの「ロ短調ミサ曲」。
最晩年に完成した、いわばバッハの作品の集大成といってもよい作品だと思います。
いくつかのセクションからできていて、合唱も分厚く複雑(基本は5声、最大で8声)、
いろんなキャラクターの曲があります。
確かに冒頭の「主よ、あわれみたまえ Kyrie eleison」は重厚な曲ですが
ミサ曲とはいえ、ずっと硬く重苦しい雰囲気なわけではなく、
「われら主をほめ Laudamus te」などは非常に軽やかに
喜ばしい雰囲気にみちた曲ですし
ほかにも、ほがらかだったり、ものすごく躍動的だったり、はたまた静けさを感じたり
ほんとうに、ひとつの作品によくこれだけのキャラクターの曲を詰め込んだなぁ
というくらい、いろんな曲があります。

BCJではおなじみになったソリスト・レイチェルのLaudamus teを聴きながら

どんな状況に置かれても、
こういう朗らかさ、明るさ、軽やかに舞い踊るような気持ちを
人から全く取り去ることなんて、できないんだから。
きっと、心の中に残してくれるから
また、息を吹き返すから・・・

・・・そんなことに、つながるのかな・・・

なんて思っていました。

「Gloria グローリア」では輝かしい、誇らしいような気持ちになって
「Et in terra Pax hominibus bonae voluntatis 
地には善意の人に平和あれ」では
日本で頑張っている、すべての人に平和がきて欲しいと願い
「Et resurrexit 主はよみがえり」では
日本も絶対、よみがえるんだから、と思い
「cujus regni non erit finis 主の国は終わることはない」では
終わらないよ、日本!と高らかに歌い上げ・・・

私はクリスチャンではないので、
信仰のある方々から見ればこういう考え方は不謹慎かもしれませんし
こんな風にこじつけていってしまうのは、バッハの本意でもないとは思いますが
そう思わずにはいられないというか。

「Sanctus 聖なるかな」では、直前のリハーサルの際に
指揮者の鈴木雅明先生が
「この音楽は天上の音楽。
天使が飛んで、雲がふわふわ浮いてて・・・
ものすごい光に満ちた世界を表現して欲しい」
とおっしゃって。
ロングトーンで音を伸ばしながら、和音の色合いが移りゆくさまに身をゆだねて・・・
何度歌っても幸せな瞬間です。

そんな風に、私自身も歌うことを心から楽しめて、
最後の曲「Dona nobis pacem われらに平安を与えたまえ」では

平穏な日々を。
まだ先になるかもしれないけど
どうか与えてください。

そう思ったら、こみ上げてきてしまって

でも、最後までしっかりと歌いきりました。
雅明先生の指揮、最初から最後まで渾身の音楽でした。
ツアー1発目の演奏会という緊張感も
集中できるよい要素であったと思います。


そして、クライマックスは演奏が終わった直後にやってきました。

雅明先生が腕をゆっくりと降ろした瞬間、
割れんばかりの拍手と、
客席総立ちでの、スタンディングオベイション。

通じてる。
いろんな思いを抱えて演奏したこと
受け止めてくれた。

今度こそ、舞台上で涙を堪えるのに必死でした。

演奏し終わってから、何人かのお客様が

演奏しに来てくれてありがとう。
忘れられない演奏になった。

と私たちに声をかけてくださいました。

こちらこそ、受け止めてくれて本当にありがとう。
最初の演奏会がここでできてよかった。
本当にありがとう。

感謝の気持ちでいっぱいになりました。
来させてもらった甲斐があったというものです。

あ、「アルトがよかった!」ともほめられたんですよ☆
今回のアルトは5人、うち3人がカウンターテノールなのですが
アルトとカウンターの声が交じり合ってとてもよかった、と。
ほめてくださった方は、ついでに私に
「あなたはとっても表情がよかった、心からエンジョイしているのがよくわかった」
って声をかけてくださいました。

音楽がすばらしいからです。。。
ありがとうございました。


今日の演奏を、とある日本人留学生の男の子が聴いてくれていました。

演奏が終わって会ったとき、
その子は泣いてました。

日本のことを思って、
いろいろ考えちゃって、
日本から皆さんが来て、ここで演奏してくださって
本当にうれしいんだ、と・・・

日本を、ふるさとを遠く離れているからこそ、思うこと。
もっともっと複雑な気持ちだったと思います。

彼のその純粋な涙を見て
私たちもうるうるしちゃいました。。。


こうして、ものすごい熱気のうちに
第1回目の演奏会は終わりました。

折りしも日本での今日(3/18 金曜日)は
あの地震から1週間だったのですね。。。


あと4回。
明日はヴァルパライゾ Valparaisoというところへ移動します。
2回目の演奏会は、あさってです。

by takahashi_chiharu | 2011-03-18 15:38 | 旅日記2011 | Comments(4)

Commented by S生 at 2011-03-18 19:52 x
Grand Rabits、 20年ほど前に仕事で行ったことがあります。何となく光景が浮かぶようです。いい演奏ができたようですね。日本は福島原発が、危険な中の現場の人の頑張りで何とか持っています。予断は許しませんが、何とか持ちこたえてほしいと皆、皆願っています。引き続き気持ちのこもった演奏を続けてください。
Commented by takahashi_chiharu at 2011-03-20 01:06
>S生様
Grand Rapids、ミシガン州ではシカゴに続いて大きい都市だそうですね・・・
私たちは大学の周辺にしか行かなかったのでちっともその実感がなかったのですが。。。
原発のこと、地震と津波の被害のことなど、アメリカでも
テレビや新聞で毎日報道されています。
そして多くの人が心配してくれています。
今日も気持ちをこめて歌います。

どうぞ皆様もお元気でお過ごしください!
Commented by yume at 2011-03-20 07:09 x
ちはるさん
初日の演奏会大成功のようで安心しました^^
今日が二回目なのですね?
日本は今頑張っています。
ちはるさんもお体お気をつけて、演奏会成功させてくださいね^^
Commented by takahashi_chiharu at 2011-03-20 14:56
>yumeさま
コメントありがとうございます♪
2回目の演奏会も大盛況のうちに終了しました。
その様子を、このあと書こうと思います。
日本の頑張りに恥じないように
アメリカの人たちに、ほんとの思いが届くように
あと3回、かみ締めながら歌っていきます。