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ガチンコ勝負。

もう、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、わたくし、かなりの
テレビっ子
でございます。
家にいる間、基本的にテレビがついています。
本読んだり練習したりしているときは別ですが。
ウィーンにいたときは、部屋にテレビがなかったので
ひたすら、ラジオをつけてました。
つまり、テレビもBGM感覚でつけているんだな。

夜、たまたまチャンネルをBSハイビジョンにしたら、
こんな番組をやっていました。

ハイビジョン特集  「若き宗家と至高の三味線~清元二派88年ぶりの共演~」
歌舞伎や舞踊音楽として知られる浄瑠璃「清元」には2つの流派が存在する。
清元宗家=高輪派と清元流=梅派。
袂を分かったままの両派が88年ぶりに共演することになった。

延寿太夫率いる清元宗家・高輪派と、三味線の梅吉が率いる清元流・梅派。
戦前に両派は、たもとを分かったまま、以来同じ舞台に立つことがなかった。
しかし、今回88年ぶりに両派が同じ舞台に上がるのだ。
2010年新年早々のけいこから、8月の舞台までの217日間。
芸の違いを乗り越えて、ひとつの“清元”に溶け合うのか。両派を見つめる。
(*NHK BSオンラインより。)


藝大では、邦楽を専攻する人たちも勉強しているのですが
交流する機会がほとんどありませんでした・・・
たくさんのレッスン室が入ってる建物の中に、
邦楽の皆さんのお部屋が並ぶフロアというのがあるのですが
ちょっと、ちがう空気流れてたなぁ。
私たちは「レッスン」だけど、あちらは「お稽古」という感じ。

番組の内容に戻りますが
高輪派のお家元でいらっしゃる延寿太夫さんが清元の曲を唄い、
梅派を率いる梅吉さんがそこへ三味線を付けていく。
お二人の年齢差は、梅吉さんがお父さん、延寿太夫さんが息子さん くらいに違う。
もともと持っている、身につけている芸も違う。
梅吉さんのほうが先輩だから、いろいろといいたいところもあるけれど
それは言わない。相手を立てる。
延寿太夫さんのほうも一門を率いている家元でもあるし、なにより清元の隆盛のために
とにかく、より高みを目指していく。
そうしていくうちに、最初はなかなかかみ合わなかった二人の芸が、
ここはこうして、それはああして、なんて議論はせずしても
いつからか、がっぷり四つに組んで、ぐいぐい迫るものになっていく。

ぐわー。
かっこいいな。
かっこいいよ、こういうの。
芸の違いとか、年の差とか越えて、ぶつかり合って、高めあっている。

太夫と三味線の関係って
歌い手とピアニストみたいだった。

それと。
高輪派にはお二人、人間国宝がいらっしゃる。
人間国宝ともなれば、いつでも演奏会の主役を務めるのが当然なのだろうけど
番組で取り上げた演奏会では、国宝さん方はそれぞれ
家元を支える歌い手、
三味線の主役「タテ」である梅吉さんを支える「ワキ」にまわっていらっしゃった。
普段とは勝手が違い、さぞかしご苦労なさったことだろう。
しかし、
本番の舞台では、国宝さん方は、しっかりとご自分のお役目を果たしていらっしゃった。
自分たちの流派に対する誇りとか気概とか、人間国宝であるご自分の芸に対する思いとか
そういうところを越えて、きっちりとお勤めを果たす。

番組の方が
「ワキにまわらなくてはならない、ということになれば
この演奏会に出演しないという選択肢もあったのでは?」
と投げかけると

「ウチの流派が決めたことですから。はいわかりました、ってやるだけです。それだけ」

個人がどうか、ではない。
それを越えて実現したい世界があるということ。
人間国宝とはいえ、いやむしろそういうお立場になるほどに芸を極めてきたひとだからこその
潔さ。胆のすわりよう。

かっこいいなぁー。
そうでなくっちゃ。

おこがましいようですが
自分もそうありたいと思いました。

どんなジャンルでも、舞台の上ではガチンコ勝負なんだなぁーと
エネルギーをもらったひとときでした。

一度、ちゃんと聴いてみたいなぁ。清元。
番組の中では「隅田川」という演目を取り上げていましたが
延寿太夫さんの切々とした唄いぶりに、ぐいぐい引き込まれました。

アツいものが流れている。こみ上げるものがある。
そういうのも、和も洋も関係ないんだな。たぶん。

by takahashi_chiharu | 2010-09-28 23:58 | 行った聴いた見た読んだ | Comments(2)

Commented by コーヒータイム at 2010-09-29 07:36 x
私も歌舞伎や文楽も好きなので、ビデオに撮っておりました。
最後の演奏だけリアルタイムで映像を見て聴きました。素晴らしかったですね。落ち着いて全部見るのが楽しみです。
Commented by takahashi_chiharu at 2010-09-29 08:55
>コーヒータイムさま
いらっしゃいませ!
延寿太夫さんのおうた、素晴らしかったですよね。
声音をいろいろと使い分けていらっしゃって、
「どうやってるのかな・・・」なんて思いつつ、
でもかなりぐっときてしまいました。。。
でもきっと、生で接するとまた違った感動があるのでしょうね。